Story - Broken-Chord /  [Luna-Haze]
 

Story

20世紀アメリカ都市部。
彼はいつも静かにヴァイオリンを弾いていた。
クラブの片隅で、街灯の下で… その物悲しい音色は都会の喧噪に溶け込むことなく、誰の心にも癒しをもたらさなかった。

恋人が乱暴に部屋のドアを閉めて出ていったその日に、彼は部屋を引き払った。

街の駅で列車に乗り込み、席に座って足を投げ出した彼。
その傍らには、およそ引越しに似つかわしくない小さな鞄と、古びたヴァイオリンケースが無造作に置かれている。
彼の向かいには初老の男が座り、彼の顔と荷物とを物珍しげに眺めていた。

やがて汽笛が鳴り響き、列車がゆっくりと動きはじめる。
線路のリズムが彼を眠りに誘い、彼はまた夢を見る。
いつもの夢、幸せな夢。

だが、この日の夢は、いつもとは少しばかり違っていた。


▲page TOP